この知事に、このブレインあり
2002.7.15

東京都の�M渦武生（はまうずたけお）副知事にお会いし、お話を伺った。
秘策を次々と打ち出す石原知事の筆頭ブレインである。
�M渦さんは、関西大学文学部を卒業後、
現在、大阪府議会議員を務めておられる松室猛先生の事務所に勤務され、
その後、石原さんをはじめとする国会議員の秘書を長く務められた。
先年の東京都知事選にあたり、
自ら政策集団を率いて石原さんを担ぎ出し、見事に知事の座を射止めた、
その人である。
石原知事は就任と同時に�M渦さんを知事秘書に据え、
特別秘書、さらには副知事へと引き上げてきた。
今や石原知事の政策はすべてこの人の両腕にかかっているといっても過言ではない。

自らのユニークなご経歴と知事選挙のいきさつを披瀝された後、
�M渦副知事は本題の石原改革について語られた。
「石原さんは、都政というものはやっていない、
都政を通じて国を動かし変えようとしている」と前置きされ、
石原さんの様々な政策や、国・都の役人、議員とのやりとりなど、
いずれもスケールの大きな、胸のすくようなお話を伺ったが、
なかでも都の役人集団との激しい戦いぶりは極めて興味深い。

役人という人種は、事実優秀ではあるものの、
反面、極めて自尊心が強く、
施策推進にあたっては、議会はおろか知事、有権者にさえ容易に容喙を許さない。
もちろん、そうした意図を表に顕さないテクニックも十分に備えている。
ＯＢ、現役を含めて鉄のごとき堅固な構造を作り上げ、
知事、議会を操りながら、意のままのまつりごとを粛々と進めていく。
東京都もまさしくそうした役人の王国であっただけに、
そこに乗り込んだ石原さん、いやその先陣を受け持った、
�M渦さんの戦いが壮絶を極めたであろうことは想像に余りある。

イメージの時代にあたり、
�M渦さんが文学部の出身であることが大きな助力になっているものと思われるが、
役人王国の改革にあたってもおもしろい表現を使われた。
「役人の強固な組織を切り裂かねばならない。
しかし鋭利な刃物で切ると、しばらくすればまた再生するから、
二度と生き返らないように、
のこぎりで挽くように、ずたずたに切り裂いた！」。

石原知事が言う「東京から国を変える」も、決して単なるキャッチフレーズではない。
脅したりすかしたり、政界の力学を駆使し、
マスコミも活用しながら着々と成果を上げつつあるが、
この点でも、政界に長い�M渦さんの人脈が大いに役立っていることは明らかである。

ここだけの話と言われたが、敢えて披露する。
今、東京都は、カジノの合法化を国に対して強く働きかけている。
大阪府の太田知事も議会において、ぜひやりたいと表明している。
しかし国は、なかなか首を縦に振りそうにない。
この点どうかと質したところ、�M渦さんは涼しい顔をして、
「東京都はすでに、ディーラー
（カジノで、親としてカードを配り客と勝負したり、ルーレットを運営したりするプロ）
の養成を始めていますよ」とのことであり、
秋にはデモンストレーションとして、法に触れない形でカジノを開設するとのたもうた。
しかも驚くべき場所（お楽しみに）に開設するとのことであり、
なるほど国を動かすとは、ここまでやることなのかと改めて感じ入ったところである。

さらに�M渦副知事はこうも言う。
「あえて東京圏とは言わないこととし、首都圏と言っている。
東京湾を取り巻く５都県市を一つの組織に近いものとして整備しつつあり、
その巨大なパワーもって国を動かしていく」。
冷静な戦術も働いている。

ところで石原新党、石原総理の可能性について伺ったところ、
「石原さんが今したいことは、この国を改革し危機から国を救うこと、
石原さんはもはや７０歳、残された時間を一瞬も無駄にはしたくない意向だ。
新党を作るとなれば大変な時間とエネルギーが必要となる、
さらにもし総理にでもなれば、儀礼的な仕事が山のように増える、
石原さんはそれは絶対いやだと言っている、
だからおそらくそうした動きはないと考えるが、
改革のためにどうしても避けて通れなくなったとしたら・・・」
ニヤリとされた。

会談の最後に私たちから、
「東京と大阪が手をつないで国を動かしていくために、
具体的な協議機関を設けてはどうか」と提案したところ、
�M渦副知事は、「それは私からも提案しようと用意してきたこと。
石原知事も極めて有意義と言っている、是非に」とのこと、
これからが楽しみだ。

�M渦さんは大阪が生んだ人材である。
この知事にしてこのブレインあり、このブレインにしてこの知事あり。

親しくお話を伺った私の結論は、
リーダーが、
「混乱をおそれずにやれ」という指示さえ出せば、
改革はできるということである。
府民のため、子供たちのため、大阪府のために、
「混乱してもいいから、思い切ってやりなさい」というメッセージを、
太田知事さん、ぜひお願いします。