由らしむべし知らしむべからず
2007.12.02

来年１月の知事選挙に推薦できないと、自公民と連合から通告された大田知事は、退任後返すと言ってきた多額の謝礼を今すぐ返すなど、三つの条件を以て再度、各党に要請に回ると報道されている。
この期に及んでも、状況をまったく理解しておられない。
もはやそのような段階ではない。
ましてや、そのような条件が再検討の対象になるなどという発想は、まったくずれていると言わざるを得ない。
府議会各派の決定は、府民の考え、府民の厳しい意見を踏まえたものであって、政党や議員の恣意的な判断ではないことを理解されていない。
党本部や幹部にお願いに回るといった発想は、府民の存在を忘れてしまっている。
一事が万事、結局、これまでも裸の王様であり続けてきたことが、最後に如実に示された。

我が自民党議員団は夏以来、政務調査会を中心に大田知事の客観的な政策評価を行う作業を重ねてきた。
中小企業への１兆円融資やひったくり半減など、達成された公約もありそうした事実も認めてきた。
しかしながら、融資の拡充にも拘わらず中小企業を取り巻く状況は改善を見せてはいない。
大田知事が自ら評価する関西国際空港の二本目の滑走路完成やシャープの大規模工場の誘致などの一方で、経済、教育、福祉は停滞を重ねている。
優秀な職員から成る、府庁の大きなポテンシャルを活かしきれていない。
なによりも企業にも、商店街にも、府庁にも活気が感じられない。
なべて大阪に元気がないのである。
すべてが大田知事の責任ではないものの、すでに８年間にも亘ってリーダーを務めてこられたなかで、こうした状況にありながら、さらにこれからも引き続いて大田知事に託すよりも、清新な人材の手腕に期待したいと、そうした意見が大勢を占めた。

そこに、大田知事の政治とカネの問題が噴出した。
「法に違反してはいない、何も問題はない」と、開き直って突っぱねたと聞いた時、大田知事の意識は府民の意識と大きく乖離してしまっているとあらためて強く感じた。
こうしたことを総合的に判断し、さらにはそれぞれの地元で各議員が聞いている府民の声を踏まえて議論した結果、推薦はむずかしいとの方向を自民党議員団は自信をもって表明した。
もとより、恩や恨み、好き嫌いといった感情的なもの、しこり、市長選挙におけるバンザイなど、巷間、伝えられるような浅薄な理由によって判断したものでは決してない。
民主や公明が同様の判断をされたことも、府民の意見を十分に踏まえられた結果であろう。

すでに事態は新しいステージに移っている。
まじめに、謙虚に、全力で府政に邁進できる人、府民の考えに真摯に耳を傾け、府民を愛し、府民から愛されることを喜び、府庁はもとより大阪府全体が持つ大きな力を引き出すことができる人、大阪と運命を共にできる人、そしてなによりも大阪がほんとうに好きな人、老若男女は問わず、そうした資質を有する新しいリーダーを期待したい。

民は由らしむべし知らしむべからず
べからずは可という字を充てて、できない、むずかしいという意を表す。
国民に知らせてはいけない、ではなく、知らせることはむずかしいの意。
政治の課題を、理屈でもって国民に納得させることはなかなかむずかしい、だからこそ政治家はまず自身の人格への信頼を得ることに努め、よって政策に対する国民の理解を得ることが大切である。
論語はそう教えている。